「不動産登記の変更ってどうすればいいの?」
「二次相続ってなに?」
相談者は都内に暮らす50代女性のAさん。高齢のお母様もご一緒です。数年前にお父様から相続したご実家の名義変更に来られました。ご実家はお母様のものとなり、お一人で暮らしている状況です。2024年4月に相続登記が義務化されます。司法書士は不動産登記や名義変更の専門家。名義変更は無事に済みましたが、一点だけAさんの相続について気になることがありました。
司法書士が気になる、将来Aさんに訪れるであろう相続の不安とは…?
「私はまだ元気だけれど、もしものことがあったときに面倒ごとは嫌なので」
Aさんのお母様は、歩くときや立ち座りでAさんに支えられながらも、ハキハキとして快活な方でした。今回はAさんにとってのお父様が残されたご実家の名義を、お母様に変更したいとのこと。
「自分でもできるみたいだけれど、母は高齢だし私も仕事があるので難しくて」
2024年4月から相続登記が義務化されます。不動産の所有者に相続があったときは、相続した配偶者や子どもが相続の開始、または所有権を取得したと知った日から3年以内に不動産名義の変更登記をしなければいけません。名義変更は必要書類をそろえて登記申請書を作成し、法務局に提出して登録免許税を納付することで完了します。しかし必要書類の確認や申請書の作成に手間と時間がかかるでしょう。相続登記の手続きを面倒に感じたら司法書士に依頼するのがおすすめです。司法書士は不動産登記や名義変更などをはじめ、行政機関に提出する書類の作成や審査請求を行う専門家。ただし司法書士によって手続きのどこまでを代行するかが異なるので、あらかじめ確認するとよいでしょう。
Aさんの場合、ご実家の名義をお父様からお母様へ変更されるということだったので、Aさんを介してお父様とお母様に関する必要書類をそろえ、申請書を作成して法務局に提出。何度か足を運んでいただいて、無事に名義変更が完了しました。
「Aさん、二次相続についてはお考えですか?」
必要書類をそろえながら気になったのは、お元気とはいえご高齢のお母様のことです。2024年の相続登記義務化に合わせて名義を変更しても、またすぐAさんに名義変更しなければいけない可能性があります。Aさんに尋ねると、ふっと表情を曇らせました。
「実は、面倒な気持ちもあって向き合わずにいたんですけど…」
家族間の相続において、父と母いずれかが死亡したとき、1度目の相続を一次相続、2度目を二次相続といいます。ポイントは一次相続では配偶者と子が相続人であるのに対し、二次相続では子だけが相続人である点です。これによって相続にかかる控除額や税率、特例措置の該当要件が異なり、一次相続と比較して二次相続で相続額に大きな差が生じる可能性があります。
二次相続時に税額をなるべく抑えるために、以下のような対策法があります。
生前に資産を分散して、もしものときに直接子どもへ相続されるよう工夫するのがポイントです。生前贈与をしたり生命保険の受取人や資産の相続者を子どもにしたりする方法があります。また一次相続と二次相続が10年の間に起こった場合に期待できるのが、相次相続控除による優待規定です。一次相続で納めた相続税のうち、一定金額が二次相続の納税額から控除されるので確認しておきましょう。
Aさんの場合、すでにご実家をはじめ大きな財産はお母様に相続されています。よって生前贈与や生命保険を活用して二次相続対策を行うとよいでしょう。
「またお世話になります」
不動産登記の名義変更完了後、Aさんが再びお母様と一緒に来られました。今回は生前贈与についてのご相談です。お母様の希望で遺言書も作成されるとのこと。お母様のハキハキとしたご様子は変わらず、作成した遺言書が活用されるのはまだ先のことに思えます。しかし、いざというときの備えは重要です。帰り際、Aさんとお母様が安心したように交わされた笑顔が印象的でした。
司法書士は行政機関に提出する書類の作成や審査請求を行う専門家です。不動産登記については自身で行う方法もありますが、手続きが難しかったり時間がかかったりします。専門家である司法書士に任せるのも一手です。あわせて相続に関する相談や正式な遺言書の作成もサポートできます。相続に関する不安や悩みは、司法書士にご相談ください。